【事前学習】 高校のベクトル単元の基礎について復習しておきましょう。
幾何ベクトル
Geometric Vector
本章ではベクトルの演算のうち基本的な加法、減法、実数との乗法(実数倍)など、ベクトルの基礎知識について学ぶ。
ベクトルとは?
ベクトルは、「向き」と「大きさ」という2つの要素をもち、物体に働く力や風の状態などを表現するのに都合の良い概念である。ベクトルに対して質量や長さなど、単一の数値で表される量をスカラーと呼ぶ。ベクトルは矢印を用いて表記すると、理解しやすい。
有向線分とベクトルの違い
向きと大きさをもつものに有向線分がある。有向線分もベクトルも「向き」と「大きさ」を表すことができ、始点および終点を有している。しかし、有向線分では、始点および終点の絶対的な位置を区別するのに対して、ベクトルでは始点と終点の相対的な位置関係のみで区別する。すなわち以下の図において有向線分 $\mathrm{AB}$ と有向線分 $\mathrm{CD}$ は異なるものとして区別されるが、ベクトル $\mathrm{AB}$ とベクトル $\mathrm{CD}$ は同じものとして区別されない。ベクトルは同じ向きと同じ長さの有向線分全体の類を表すものである。
ベクトルの表記
高校教育では、ベクトルの表記は、点 $\mathrm{A}$ を始点、点 $\mathrm{B}$ を終点とするベクトルを
$\Vec{AB}$ と表す、もしくは小文字のアルファベット一文字を用いて $\vec a$ と表す、のいずれかの記法を用いた。本サイトでも同様の表記用いることとする。ただし、大学教育では $\vec a$ を太字の小文字を使って $\boldsymbol{a}$ などとしばしば表記されるので、物理学等の他の講義では注意が必要である。
また、ベクトルの大きさ(長さ)を表すには絶対値の記号を用い、$|\Vec{AB}|$ または $|\vec a|$ と表す。したがって $\vec a$ と $\vec b$ の長さが等しいことを $|\vec a| = |\vec b|$ と表記する。また、 $\vec a$ と $\vec b$ が平行
であることを $\vec a \parallel \vec b$ と表記する、さらに、 $\vec a$ と $\vec b$ の向きが同じで大きさが等しいとき、 $\vec a$ と $\vec b$ は等しいといい、等号を用いて $\vec a=\vec b$ と表記する。これも $\vec a\sim\vec b$ と表記されたりもする。
特別なベクトル
特別なベクトルの名称として、大きさが 1 のベクトルを特に単位ベクトルと呼ぶ。また、大きさが 0、すなわち始点と終点が同じ位置にあるものもベクトルの一種として解釈し、特に零ベクトルと呼び、$\vec 0$ と表記する。
また、あるベクトルと大きさが同じで、向きが正反対のものを逆ベクトルと呼ぶ。例えば
$\Vec{AB}$ の逆ベクトルは $\Vec{BA}$ である。また、 $\vec a$ の逆ベ
クトルはマイナスの符号を用いて $-\vec a$ と表記する。
ベクトルの和(加法)
2つのベクトルの和は、ベクトルを表す2つの矢印を順につなげてできる矢印である。
3つ以上のベクトルの和も、すべての矢印を順につなげたものである。したがってベクトルの和では数の四則演算と同様に交換法則や結合法則も成り立つ。
ベクトルの差(減法)
ベクトルの差 $\vec b-\vec a$ は、第二項のベクトル $\vec a$ の終点を始点とし、第一項のベクトル $\vec b$ の終点を終点とするベクトルとなる。
ベクトルの実数倍
ベクトルの実数倍は、ベクトルの向きは不変で長さが、その実数倍になる。ただし、実数が負の場合は、正反対の向きとなる。
2次元ベクトル
2D Vector
Lesson
- ベクトル $\Vec{AC}-\Vec{DB}-\Vec{EC}+\Vec{DF}-\Vec{BE}$ を簡単にせよ。
- 長方形$\mathrm{ABCD}$ において、$\Vec{AB}=\vec b,\ \Vec{AD}=\vec d$ とするとき、次のベクトルを $\vec b,\ \vec d$ で表せ。
- $\Vec{DB}$
- $\Vec{AC}$
- 平行四辺形$\mathrm{ABCD}$ の対角線の交点をOとし、$\Vec{OA}=\vec a,\ \Vec{OB}=\vec b$ とするとき、次のベクトルを $\vec a,\ \vec b$ で表せ。
- $\Vec{OD}$
- $\Vec{AD}$
- $\Vec{CD}$
- 平行四辺形$\mathrm{ABCD}$ において、$\Vec{AC}=\vec p,\ \Vec{BD}=\vec q$ とするとき、次のベクトルを $\vec p,\ \vec q$ で表せ。*
- $\Vec{CD}$
- $\Vec{BC}$
- 正六角形$\mathrm{ABCDEF}$ において、$\Vec{AB}=\vec p,\ \Vec{BC}=\vec q$ とするとき、次のベクトルを $\vec p,\ \vec q$ で表せ。
- $\Vec{CD}$
- $\Vec{BF}$
- $\Vec{CF}$
- $\triangle\mathrm{ABC}$ の辺 $\mathrm{BC}$、$\mathrm{CA}$、$\mathrm{AB}$ を 1:3 の比に内分する点を、それぞれ $\mathrm{D}$、$\mathrm{E}$、$\mathrm{F}$ とするとき、$\Vec{AB}=\vec b,\ \Vec{AC}=\vec c$ として、次のベクトルを $\vec b,\ \vec c$ で表せ。
- $\Vec{AD}$
- $\Vec{BE}$
- $\Vec{CF}$
- $\Vec{AD}+\Vec{BE}+\Vec{CF}$
- 平行四辺形$\mathrm{ABCD}$において、辺BCの中点を $\mathrm{E}$、線分 $\mathrm{DE}$ を 1:2 の比に内分する点を $\mathrm{F}$ として、$\Vec{AB}=\vec b,\ \Vec{AD}=\vec d$ とおく。次のベクトルを $\vec b,\ \vec d$ で表せ。
- $\Vec{AE}$
- $\Vec{DE}$
- $\Vec{AF}$
- $\triangle\mathrm{ABC}$ において、2辺 $\mathrm{AB}$、$\mathrm{AC}$ を 2:1 の比に内分する点を、それぞれ $\mathrm{M}$、$\mathrm{N}$ とするとき、$3\Vec{MN}=2\Vec{BC}$ であることから、$\mathrm{MN}\parallel\mathrm{BC}$ (平行)かつ $3\mathrm{MN}=2\mathrm{BC}$ であることを示せ。
- $\triangle\mathrm{OAB}$ において、$\Vec{OA}=\vec a,\ \Vec{OB}=\vec b,\ \Vec{OP}=\vec p$ とする。実数 $s,\ t$ がの以下の範囲で動くとき、$\vec p=s \vec a+t \vec b$ となる点 $\mathrm{P}$ の存在範囲を図示せよ。
- $-1 \leq s \leq 1,\ 0 \leq t \leq 2$
- $0 < s < 0.5,\ 0 < t < 0.5$
- $0 \leq s \leq 1,\ 0 \leq t \leq 1$
- △ABCにおいて、$\Vec{AC}+t\Vec{BC}$ と $2\Vec{AB}-t\Vec{AC}$ が平行であるとき、実数 $t$ の値を求めよ。
Answer
- $\Vec{AF}$
(導出)
$\begin{align}
=\Vec{AC}+\Vec{BD}+\Vec{CE}+\Vec{DF}+\Vec{EB}\\
=\Vec{AC}+\Vec{CE}+\Vec{EB}+\Vec{BD}+\Vec{DF}
\end{align}$
- $\vec b-\vec d$
- $\vec b+\vec d$
- $-\vec b$
- $-\vec a-\vec b$
- $\vec a-\vec b$
- $\frac{\vec q - \vec p}{2}$ $=\frac{1}{2}\vec q-\frac{1}{2}\vec p$
- $\frac{\vec p + \vec q}{2}$ $\frac{\vec p}{2},\frac{\vec q}{2}$を基本に考える
- $\vec q-\vec p$
- $\vec q-2\vec p$
- $-2\vec p$
- $\frac{3\vec b + \vec c}{4}$
- $-\vec b+\frac{3}{4}\vec c$
- $\frac{1}{4}\vec b-\vec c$
- $\vec 0$
- $\vec b+\frac{1}{2}\vec d$
- $\vec b-\frac{1}{2}\vec d$
- $\frac{1}{3}\vec b+\frac{5}{6}\vec d$ $\Vec{AF}=\Vec{AD}+\frac{1}{3}\Vec{DE}$
- ($3\Vec{MN}=2\Vec{BC}$を証明する)
$\begin{align}
\Vec{MN}&=\Vec{AN}-\Vec{AM}\\
&=\frac{2}{3}\Vec{AC}-\frac{2}{3}\Vec{AB}\\
&=\frac{2}{3}(\Vec{AC}-\Vec{AB})\\
&=\frac{2}{3}\Vec{BC}
\end{align}$
- $s,t$の値が可動範囲の両端になる時の$\vec p$をとりあえずプロットしてみる。
$(s,t)=(-1,0),(-1,2),(1,0),(1,2)$など
- $t=1\pm\sqrt 3$
例えば$\Vec{AB},\Vec{AC}$だけで表す。 $\Vec{BC}=\Vec{AC}-\Vec{AB}$
$-t\Vec{AB}+(1+t)\Vec{AC}=k(2\Vec{AB}-t\Vec{AC})$
$-t:1+t=2:-t$ (係数の比が等しい)
$t^2=2(1+t)$ (係数をタスキにかけたものが等しい)
3次元ベクトル
3D Vector
空間ベクトルは2 次元のベクトルである平面ベクトルを3 次元に拡張したものである。
2つのベクトルの和や差、ベクトルの実数倍などの演算や、演算に対する交換法則や結合法則なども、平面ベクトルと同様に成り立つ。
平面上では、互いに独立な2つのベクトルの線形結合により任意のベクトルを表すことができるが、空間内で任意のベクトルを表すためには、互いに独立な3つのベクトルが必要となる。
平面上の平行四辺形に相当する空間における立体は平行六面体である。平行六面体は向かい合った3組の面がすべて平行な六面体であり、各面の形状はすべて平行四辺形である。
Lesson
- 平行六面体ABCD-EFGHにおいて、$\Vec{AB}=\vec b,\ \Vec{AD}=\vec d,\ \Vec{AE}=\vec e$ とするとき、次のベクトルを $\vec b,\ \vec d,\ \vec e$ で表せ。
- $\Vec{EG}$
- $\Vec{AG}$
- $\Vec{FD}$
- 平行六面体ABCD-EFGHにおいて、$\Vec{AC}=\vec c,\ \Vec{AF}=\vec f,\ \Vec{AH}=\vec h$ とするとき、次のベクトルを $\vec c,\ \vec f,\ \vec h$ で表せ。
- $\Vec{AB}$
- $\Vec{BF}$
- $\Vec{AG}$
- $\Vec{BH}$
- 四面体OABCの△ABCの重心をGとする。辺BC, AB, OCの中点をそれぞれD, E, Fとし、線分EFの中点をMとする。$\Vec{OA}=\vec a,\ \Vec{OB}=\vec b,\ \Vec{OC}=\vec c$ とするとき、次のベクトルを $\vec a,\ \vec b,\ \vec c$ で表せ。
- $\Vec{OD}$
- $\Vec{OG}$
- $\Vec{EF}$
- $\Vec{OM}$
- 四面体OABCの辺BC, CA, ABの中点をそれぞれD, E, Fとし、$\Vec{OA}=\vec a,\ \Vec{OB}=\vec b,\ \Vec{OC}=\vec c$ とするとき、次のベクトルを $\vec a,\ \vec b,\ \vec c$ で表せ。
- $\Vec{OD}+\Vec{OE}+\Vec{OF}$
- $\Vec{AD}+\Vec{BE}+\Vec{CF}$
- 四面体OABCの辺BC, CA, ABの中点をそれぞれD, E, Fとし、$\Vec{OD}=\vec d,\ \Vec{OE}=\vec e,\ \Vec{OF}=\vec f$ とするとき、次のベクトルを $\vec d,\ \vec e,\ \vec f$ で表せ。
- $\Vec{OA}+\Vec{OB}+\Vec{OC}$
- $\Vec{OA}$
- $\Vec{AB}$
Answer
- $\vec b + \vec d$
- $\vec b + \vec d + \vec e$
- $-\vec b + \vec d - \vec e$
- $\frac{\vec c + \vec f - \vec h}{2}$
- $\frac{-\vec c + \vec f + \vec h}{2}$
- $\frac{\vec c + \vec f + \vec h}{2}$
- $\frac{-\vec c - \vec f + 3\vec h}{2}$
- $\frac{\vec b + \vec c}{2}$
- $\frac{\vec a + \vec b + \vec c}{3}$
- $\frac{\vec c - \vec a - \vec b}{2}$
- $\frac{\vec a + \vec b + \vec c}{4}$
- $\vec a + \vec b + \vec c$
- $\vec 0$
- $\vec d + \vec e + \vec f$
- $-\vec d + \vec e + \vec f$
- $2\vec d - 2\vec e$
【事後学習】 平行四辺形や平行六面体に関する問題の解法を復習しておきましょう。
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